鑑別診断は、問診、視診、触診、TEST(検査)の順で行う。
鑑別は患者の”肩が痛い”という主訴に惑わされないように正しい手順方法で行うようにする事。
”肩、肩甲骨が痛い”という肩付近の主訴で考えられる疾患
→肩関節周囲炎、腱板損傷・断裂、石灰沈着炎、亜脱臼、頚椎ヘルニア、帯状疱疹、第一肋骨疲労骨折、狭心症及びその他心疾患など
様々な要素が考えられる為、下記をできるだけ頭に入れ診察に望むようにする事。
問診時(聞き取り)
①いつから(いつ、どこで、何をして)
②発生機序(シチュエーションチェック。急性、慢性の判断材料)
③運動時痛の有無(肩関節各ROMどの動き、ポジションでの疼痛かをチェック)
④安静時痛の有無()
⑤夜間痛の有無(寝入りが悪い、痛みで起きる等)
⑥頚椎症状の有無(上肢、指への放散痛、痺れの有無)
⑦既往歴の確認(鑑別材料として)
視診・触診・Test
→明らかな解剖学的所見からの逸脱が見られるか確認
肩甲上腕関節付近など、表層に関しては超音波が有効
問診時、急性が疑われる場合は徹底した視診触診を行う。例は下記に記す。
明らかに対応できない疾患は即紹介を出せるように準備する事。
肩付近の痛みを訴える患者
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【1. 発生機序シチュエーション・年齢】
├─ 小児・成長期
│ → 骨端線離開(圧痛:上腕骨近位、投球や接触後、手をついて転倒など)
⏬骨端線離開のX線画像。右肩の離開が確認できる。

└─ 成人・中高年の場合 → 2へ
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【2. 外傷歴の有無】
├─ 明らかな外傷あり
│ ├─ 変形あり → 骨折(上腕骨骨幹部、外科頸など)
脱臼(モーレンハイム窩の有無や三角筋膨隆の有無など)
⏬三角筋膨隆の消失画像。肩峰、肩鎖関節が浮き出ているのが確認できる状態。

⏬モーレンハイム窩の画像。前方脱臼するとこの窪みに上腕骨頭が確認、触知できる。

│ └─ 変形なし → 腱板損傷、肩鎖関節損傷、不安定症、その他疾患を疑う
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└─ 外傷なし → 3へ
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【3. 主症状の性状】
├─ 夜間痛・急性強い痛み
│ → 石灰沈着性腱炎(圧痛:棘上筋腱)
⏬※1棘上筋腱、肩峰と大結節を結ぶラインにある。触診しながら外転させると収縮と大結節が肩峰下に潜るのがわかる。

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├─ 自動のみ制限・挙上時痛
│ → 腱板損傷(圧痛:大結節)※1に同じ
│ – Jobe, Drop arm test
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├─ 自他動とも制限
│ → 五十肩(肩関節周囲炎)→炎症期、拘縮期、凍結期の判断。他疾患の併発も疑うこと。
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├─ 肩鎖関節直上圧痛
│ → 肩鎖関節障害
│ – Cross body adduction test
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├─ 結節間溝圧痛+肘屈曲回外で痛み
│ → 上腕二頭筋長頭腱炎
│ – Speed test, Yergason test
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├─ 不安定感(脱臼感覚)
│ → 肩関節不安定症
│ – Apprehension test, Relocation test
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├─ 深部痛(肩の奥、中が痛いなど)+クリック感(GHリズムの乱れから起こる)
│ → 関節唇損傷
│ – O’Brien test, Crank test, Biceps load test
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└─ 上記以外 → 4へ
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【4. 頚部・体幹関連か?】
├─ 頚部運動で放散痛
│ → 頚椎症性神経根症 / 椎間板ヘルニア
│ – Spurling test, traction test
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├─ 鎖骨下・斜角筋圧痛、挙上でしびれ
│ → 胸郭出口症候群
│ – Adson test, Roos test, Wright test
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├─ 肩甲骨周囲痛+スポーツ歴
│ → 第一肋骨疲労骨折(圧痛:肩甲骨内側縁)
│ – 圧痛確認、画像必須 ※過去、高校野球部18歳の症例あり。
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├─ 皮疹・神経痛
│ → 帯状疱疹(皮膚症状が診断の決め手)
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└─ その他へ
